嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 最後に見たのは心配そうな礼の顔だった。そして、次に目覚めたときにも美琴はまったく同じものを見た。

「あれ、礼さん?」
「よかった。気がついたか」

 礼はふぅと大きなため息を落とした。よほど心配してくれていたのだろう。美琴はゆっくりと身体を起こす。知らない間に寝室に運ばれ、お布団の上に寝かされていたようだ。

「ごめんなさい。ご面倒をおかけしちゃって。身体が丈夫なだけが取り柄なのに、おかしいなぁ」

 美琴があははと笑うと、礼は厳しい顔で言う。

「無理するな。まだ顔色が悪い。いつから具合が悪かったんだ?」
「具合が悪いってほどでも……このところ少し食欲ないなぁとかそのくらいで」
「あの女のせいか? それなら、すべて俺の責任だ」

 礼は申し訳なさそうに頭を下げた。美琴は慌てて首を横に振る。まりえのことはたしかに悩みの種だったが、それで食事が喉を通らなくなるような繊細な女ではない。

「いやいや。全然関係ないですから!貧血とかそんな感じで、すぐ治ると思いますし」

 ちょうどそこに温かいお茶を持った丸代がやってきた。

「よかった。目が覚めたのね、美琴ちゃん」
「はい。心配かけてごめんなさい」
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