愛され王女は王の道をゆく
 部屋に戻ったアナスタシアは、レオナルドが事前に用意していた彼の資料に目を通す。

 リィン・デュランザー。年齢は二十一歳。騎士団所属の見習い騎士。

 どこか上の空で、訓練は真面目に参加しておらず、事情をよく知らない同僚たちからは煙たがられている。

 一方、騎士団長を始め、騎士団上層部からの評価は非常に高く、次期騎士団長、あるいは幹部職への配属も打診されていたが、本人が頑なにこれを拒否。

 退団の話もあったようだが、なんとか留まってもらっている状態らしい。


「随分酷いわね。騎士団って、いつからそんな居づらくなったの?」

「居づらいわけではないですよ。
 先程も話した通り、デュランザーにとって、期待はずれの甘ちゃん組織だったというだけで」

「言いたい放題ね……」


 確かに、近衛騎士隊を基準とすれば、騎士団は甘ちゃん組織と言われても仕方がない。

 近衛騎士は剣術以外にも、魔法は勿論、他国の言語も複数種類習得する必要がある。
 にも関わらず、近衛騎士の方が、騎士より剣術で上手ともなれば文句は言えない。


「実際問題、私以下の実力しかない時点で、騎士として役に立たないんですよ」


 レオナルドのそれは、極論ではあるが一理ある。

 彼らは外敵から、王族と国民を守る守護者であり、護るべき相手と同レベル程度で満足して貰っては困るのだ。

 とはいえ、上層部は非常に優秀な人材が揃っているため、王家の命として気軽にテコ入れできないのも事実だった。
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