愛され王女は王の道をゆく
「いずれにしても、私が彼に興味を抱いたのは事実よ。
 明日はお忍びで、街に出るつもりだったし、丁度いいわ。
 レオ。悪いけど、明日、偶然を装って私と彼が、街でばったりと出会ってしまうようなシチュエーションを用意しなさい」


 ちなみに、私は街ではいいとこのお嬢様って思われているからよろしく――と、付け加えるアナスタシアに、レオナルドは文句の一つも言わず、ただ一言「承知しました」と言って部屋を出ていった。

 早速、明日の用意でもしてくれるのだろう。


(まったく、よく出来た弟を持つと色々と大変ね。私も明日の準備をしないと)


 時刻は夕方。

 晩御飯の時間も考えれば、アナスタシアが準備に取れる時間はそれほどない。

 アナスタシアは簡単に準備を済ませ、夕食を食べに向かった。





 翌日。

 窓から抜け出し、裏道を行くと顔見知りの門番が仕事をしている。

 アナスタシアは一声かけて外へと出た。

 しかし――


「お忍びでどちらに行かれるのですか?」


 目の前にはリィンがいた。

 偶然を装って出会うはずが、まさかの出発前に見つかってしまう大失態。


(これも作戦のうちなのかしら?)


 基本的に外回りは、警備隊と呼ばれる人々が巡回をしている。
 そのため、リィンの様な騎士が偶然通りかかるということはまずない。

 どこから聞いたのか、事前に待ち伏せしていたようにしか見えなかった。
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