愛され王女は王の道をゆく
「街の方へ。よく行くお店があるのよ」

「まさか、何度も一人で街へ?」

「ええ、勿論よ」


 当たり前だが、王族であるアナスタシアは、正体がバレればいつ攫われるかも分からない。

 そのため、実際にはそう簡単に抜け出すことは出来ないのだ。

 しかし、度々、抜け出していたと聞かされれば、城にいる騎士としては頭を抱えたくなることだった。


「もう少し、護衛する者の身にもなったらどうです?」

「関係ないわ。護衛は付けてないもの」

「は?」

「だから、護衛を付けずに、いつも一人で行っているから、護衛は関係ないと言っているのよ」


 さも当たり前のように言うアナスタシアだが、一歩間違えば大惨事になることは言うまでもない。

 だが、逆に言えばだからこそお忍び(・・・)なのだ。


「正気の沙汰とは思えません」

「別に問題なかったもの大丈夫よ。
 そして、これからも何もないから。あってもどうにかなるしね」


 その言葉に納得がいかないのか、リィンは訝しげにアナスタシアを見ていた。

 どうやったのかは分からないが、これがレオナルドの用意した策だと察したアナスタシアは、そのままリィン連れて行くことにした。
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