愛され王女は王の道をゆく
 その一連の動きは洗練されたもので、思わずリィンは見とれてしまった。

 年下の少女にしてやられて、少し拗ねたようにリィンはアナスタシアに言った。


「きっちりと、武装はされているのですね」

「まぁ、このくらいはね。隠し持ちしやすいし、手加減しやすいから」

「お見逸れしました」

「いえいえ、貴方の行動と判断は正しいものだったわ。私に通用しないだけでね」


 アナスタシアは、自慢気にウインクしながらそう答える。

 それを見たリィンは、結局、一言「着替えてきます」と残して去っていった。

 流石に、皮肉もあっさり流すほどの余裕を見せられれば、騎士としてのリィンに拒否権などあるはずもなかった。

 アナスタシアはそれを見送った後、木の陰に向かって声をかけた。


「レオ、出てらっしゃい」

「はは、流石ですね姉上」

「貴方はまったく……」

「分かってて筋書きに乗ったのでしょう?」

「これだけ人気のないところを選ばれればね」


 レオナルドの筋書きとは、候補者であるリィンに、この場でアナスタシアの実力を少なからず分からせるというもの。

 結果として、リィンは特に抵抗することもなく、アナスタシアに付いていくことを自ら決めた。
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