愛され王女は王の道をゆく
「リィンは今の王国の体制に不満があるようだし、これで私に興味を持ってくれたのは事実でしょうけど、目撃者がいたらどうするつもり?」

「私がそんなヘマをするとでも?」


 とぼけた様にそんなことを言うレオナルド。

 こういう裏工作は、流石のアナスタシアでもレオナルドに勝てない。

 実に優秀な弟である。


「お待たせしまし――レオナルド殿下」

「やぁ、リィン。悪いけど姉上を頼むよ」

「かしこまりました」


 そのやり取りに、アナスタシアは首を傾げる。

 昨日のレオナルドの発言から、騎士団で悪名高いリィンのことを、幹部として知っているだけだと思っていたアナスタシアだが、実際には少し違うらしい。


「随分親しそうね」

「以前、少し任務で殿下にはお世話になったことがありまして……」

「レオ、貴方そんなこと、一言も言ってなかったじゃない」

「言っても言わなくても、姉上がやることは変わらないじゃないですか」


 確かにレオナルドの言う通りなのだが、これとそれとは別だ。

 というよりも、知り合いならもう少し出会いの調整をしてくれてもいいのではないか?


「そういう問題じゃないんだけど――気にするだけ無駄ね。
 リィン。行きましょう。あんまりここに長居すると、他の騎士に気づかれるわ」

「かしこまりました」


 そう言って、二人はレオナルドと分かれ、街へと向かったのだった。
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