朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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そこから数日後、打ち合わせを終えて座席に戻ると、メールの中に珍しく【那津 依織】の文字を見つけた。
《デザインラフ、4案できた。》
「え、4案も!?」
端的な男からのメッセージに動揺して、場所を気にせず盛大に声を発してしまった。
「青砥どうしたー」と近くの席の同僚達が可笑しそうに揶揄ってきて、とりあえず謝りつつも、もう一度パソコンの画面に視線を戻す。
メールで返信しようとしたけど、はやる気持ちが先行して社内スマホを手に取った。
「もしもし!?」
"…なに。"
「出来たんですか!?」
"言っとくけど、ラフのラフな。"
「すぐ見たいです…!!」
"あー俺、今から外で打ち合わせ。"
ええ…とがっかりした気持ちを乗せた返事に、男が浅く笑う声が微かに聞こえてきた。
"夜中は、また会社で作業してるから。
明日の朝、お前に1番に見せる。"
この人の声は、心臓の奥を刺激するくせに耳に優しく馴染んでずっと聴いていられるなんて、とてつもなく恥ずかしい感想が浮かんだ。
「朝、何食べたいですか?
美味しい朝ごはん作ります。」
"ステーキ。"
「…言いましたね。」
絶対本気じゃない答えにツンと返したら、やはりまた楽しそうな声が聞こえて、私も結局破顔した。
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「_____え?」
「さっき×社の担当さんから、青砥宛に電話あったよ。今日の会食、18時からでお願いしますって。」
先輩からの言葉を受けて、心は凍りついてしまったかのようにうまく機能していない気がするのに、身体は嫌な汗がずっとじんわり滲む感覚がある。
先方の担当者である横溝さんからの連絡は、オリエンテーションで実際顔を合わせてから、その頻度が劇的に増した。
最初は勿論、コンペや自社に関することだったから、メールや電話はきちんと対応して、ヒアリング内容として、那津さんはじめ、チームに共有してきた。
"青砥さん、多分同年代ですよね。おいくつですか?
僕も主担当は初めてなので、お話ししやすい方がいて嬉しいです。"
最初は、そんな入りだった気がする。
だけど、少しずつ、少しずつ。
"上司も言ってましたが、青砥さん本当可愛いですよね。"
"もっと色々このプロモーションのことすり合わせするために、2人でお話できませんか?"
コンペ以外の話が増えていく焦りを、
どうすれば良いのか分からなくなっていた。
___『そんなに向こうの担当から連絡来てんの。』
那津さんの指摘はその通りで、
不審がられてしまったのは、私のミスだ。
あまりにも、横溝さんからの連絡は多い。
それが勘違いであれば良いと、ずっと願ってきた。
そして、「2人で会いたい」に「夜に」
が付け加えられるようになった時。
メッセージを確認した瞬間、震える手はどうすれば手っ取り早く収まるのか、それを必死で考えるようになった。