朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
 




「今日の会食、18時からでお願いしますって。」

____アポイントの約束なんて、してない。


違和感を感じるようになってから、なるべくメールや電話で済むようにしてきたし、どうしても会う必要のある時は必ず《お昼時、会社内、複数人》それを守っていた。

こんな風に突然のアポイントを提示されて、今から急に誰かを連れていくのは厳しい。

そもそも「担当の人が怖いから」と正直に伝えたとして、クライアント第一のこの環境で、何か変わるのだろうか。

「信頼」を守ることが、何より鍵を握る。


どくどくと嫌な打ち方を繰り返す心臓の痛みは増すばかりで、下手な呼吸の中で、必死に足に力を入れて立っていた。


「青砥、コンペ前に担当さんに気に入られてるの大きいな!大口案件で上も注目してるし、なんせデザイナーは那津だしな。最後まで頼む。」


電話の内容を聞いていたのか、上機嫌で私にそう追い討ちをかける課長に、カラカラの喉ではうまく声が出せなかった。



そして同時に、朝、寝起きのままに私を出迎える男を思い出すと、視界に映るものの輪郭全てが急にぼやけていく。


___那津さん。

咄嗟に先ほどと同じように、
電話をかけたい衝動に駆られる。



"…那津さん含め、関わるチームの皆さんがコンペの内容にだけ注力できるよう、他の面倒ごとを請け負うのもアカプラの仕事です。"

でも、そう言ったのは紛れもなく私だ。

忙しいあの人は、結局お人好しだから、うるさい若手に押し負けて、時間を作ってデザイン作成にしっかり取り組んでくれている。

迷惑は、絶対、かけられない。



< 11 / 81 >

この作品をシェア

pagetop