朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
「とにかく、要望はファミリー向けだそうです。」
「あーはいはい、もうお前、はよ行け。」
「え、聞いてますか?
デザインラフ案、よろしくお願いしますよ!?
コンペまで思ったより時間無いです、なんならカウントダウンカレンダーもご用意しますけど。」
「要らん。」
シッシと手で軽く払ってあしらってくる那津さんに、この案件のことを話せる、早朝のたった数十分。
「……青砥。」
「はい?」
「オリエンテーションの後、プロモに関する先方からの共有事項がやけに多い気がするけど。
そんなに向こうの担当から連絡来てんの。」
「……、」
"青砥さん、実は上役達が言ってた要望を小耳に挟んだんですけど…よかったら、お話できませんか。"
「青砥?」
「信頼関係を築くには、先方との密な連絡が必須なんですよ。」
「俺絶対、お前の仕事無理だわ。」
げ、と嫌そうな顔を隠そうともしない男の表情を見たら自ずと顔が綻んだ。
そんな私を見て、ジ、と切れ長の瞳で見下ろしてくる彼の様子は、どこかいつもと違っていて、「那津さん?」と呼ぶと、一歩また私に近づく。
彼の気配がありありと感じられるその距離で、胸なんか簡単に跳ねる私のことに気付いたら、この人はどんな顔をするだろう。
「…いや、なんでもない。」
だるそうに私の髪をくしゃりと乱して、「朝ごはんどーも」と、先に会議室を出ていく男の背中を暫く見つめてしまった。
「…簡単に、触らないで欲しい。」
本心じゃない不満が、1人きりの朝の静かな会議室に誰にばれることもなく、吸い込まれていった。
"そんなに向こうの担当から連絡来てんの。"
例えば、指摘された通り、
心の奥に巣食う不安があったとしても。
貴方に出会うための数十分があるから頑張れるのだと。
公私混同が甚だしい気持ちは、
絶対に言えるわけが無かった。