朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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先輩からの伝言を受け、深呼吸を何度か続けた後、漸くかけ直した電話に出た横溝さんの声は、少し疲れているように思えた。
"強引にすみません。ちょっとこの案件に関して、厄介な要望をまた上から受けてしまって……共有させていただきたいなあと思って。
勿論他社さんにも話はしてますが、なんか、青砥さんには、直接相談したいと思ってしまいました。
ごめんなさい。"
私だって、他の会社の担当者と同じように扱ってもらわないと困る。
だけど、横溝さんの立場が上司と私達依頼先の板挟みになって悩ましいということも、理解はしているつもりだ。
それにデザインに関わる要望の変更なら、それはラフを着々と作っている那津さんに早く伝えなければまずい。
こんなことは最後だと、しっかり告げよう。
そう決めて指定された場所へ向かう足は、
少しだけ震えていた。
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「…あの、横溝さん。
お会計は、半分こちらでもたせてください。
領収書も分けてもらいましょう。」
爽やかで人当たりの良さそうな笑顔を見せた横溝さんは、食事を終えて綺麗に片付けられたテーブル越しに私の意見をあっさりと跳ね除けた。
「やめてください、払います。
僕も男ですよ。呼び出しといて払ってもらうなんて
格好がつかないじゃないですか。」
___私は、"男と女"として、此処に
貴方と食事に来たつもりは無い。
そう言いたい気持ちだけが空回って、
心がまた、ずしんと重さを増す。
予約されていた店は、薄暗い照明と黒を基調とした店内によりシックな雰囲気が漂う和食居酒屋だった。
完全な個室では無かったことだけが救いだったが、結局食事中、横溝さんから案件に関することを聞けた時間はきっと30分にも満たない。
デザインに関する要望というよりは、広告の出稿のバランス(SNSやネットをどの程度使うか)に関することだったから、那津さんにはあまり影響はしない。
以前のような、引っかかる言葉も会話の端々にあったが、なんとか食事を終えた。
お金を払うと聞かないので、そこは課長に報告して、上役同士の接待で、調整してもらおう。
そう考えて、じゃあ行きましょうか、と声をかけようとした時だった。