朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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スマホが震えながら、高らかなメロディを奏でているのに気付いて目を開けると、いつもと何も変わらない自分の部屋がそこには存在している。
反射的に音を急いで止めて、また布団を頭からかぶって両膝を折るかたちで身体をぎゅ、と丸く縮めた。
___朝に、なってしまった。
目覚ましの音が憂鬱だなあと、
思うことは今までにも沢山あった。
だけど紛れもなく「怖い」と。
鳴り響くアラームが、弱い自分を
責めているように聞こえることは今までに無かった。
"__青砥。少し、休んだらどうだ。"
課長からの休職の提案は、恐らくもう決定事項で。
それは同時に、このコンペに関するあらゆる課題の収拾に「お前は要らない」と突きつけられているのだと悟った。
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"あの日"、私は結局、会社には居られなかった。
課長に啖呵を切った那津さんは、私の腕を引いてそのまま会社を出たあとも、ずんずんと進んでいく。
「那津さん、あの、私、大丈夫です。」
「お前、嘘ばっかつくから信用しないことにした。」
スタスタと前を歩く男は、朝の往来の少ない車道の脇でその長い脚を止めた。
スマホを操作している画面をチラリと見たら、どうやらアプリでタクシーを呼ぼうとしている。
それに気付いて焦りながら彼に投げた言葉はするりとかわされてしまった。
私の腕を掴んで、スマホに視線を向けたまま。
こっちを見て優しく微笑んだりなんかしない。
それでも触れる熱が、離れることも無い。
「嘘じゃない、です。」
苦楽を共にしてきたグレーのパンプスは、つま先が少し剥げていて、そろそろ替え時だと、視線を地面に落として、気が付いた。
「昨日、意図せずクソみたいな"残業"
させられたんだろうが。」
横溝さんとの会食を、残業だと、あれは仕事だと。
私が彼に言いたかったことを、なんてことなく言い切ってくれることにさえ、救われてしまう。
「今日は、振替休日ってことにしとけ。」
「色々、むちゃくちゃです…」
確かに今日は、あの空間にいることは、私にとっても辛い。
絶対流さないと決めた涙が瞳の中で溜まりに溜まって、瞬きが出来ない。
それに気付いた那津さんが「たまにはサボれ」と、溜息と共にパーカーでぐい、と拭いとってきた。
数分後にやってきたタクシーに私を押し込んだ彼は、チケットを渡しながら「またな」と笑って。
やけに意味深に聞こえた言葉の意味を聞く前にドアを閉めて、私を見送った。
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だけど結局、あの日から私は一度も出社していない。
なし崩しのように始まった"休職期間"によって、彼の「たまにはサボれ」という言葉も、もはや無効になってしまった。
もうすぐ2週間が経つ。
同期や同僚から「大丈夫?」と気遣うメッセージが最初の頃は来ていたけどそれもどこか、よそよそしさがあった。
皆んな当然忙しいし、あの案件のことがどこまで広まっているかは分からないけど、巻き込まれたくないと誰だって思うだろう。