朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加






"もしもし蘭子?どうだった?”


「とても緊張しました。
私に初対面の人とお茶させるなんて人選ミスです。」


那津君の事務所から帰宅する途中、まるで私の行動を観察していたのかと思うくらいのタイミングの良さでかかってきた電話に出た瞬間、例の彼女について聞かれて溜息が漏れた。



"今日も俺の奥さんは可愛いなあ。”


全く繋がらない会話に再度息を深く長く吐いて、信号待ちに足を止める。


"まあでも、蘭子もずっと研究詰めでやっともぎ取った有休だし。たまには誰かと話すの大事だよ。"

「……なんか上手く言いくるめられてる。」

"気のせいじゃない?"

クスクスと聞こえてくるスマホ越しの笑い声がやけに愉しそうで、この男は本当に油断ならない。


無表情かつ愛想の悪さで有名な私は、初対面の自分より歳下の女の子を怖がらせてしまうのではと思っていたけど。

出会った彼女は、くるくると顔の色が変わるとても可愛らしい女性だった。


___"そこに、甘え続けるわけにはいかないんです"

だからこそ、彼女の言葉にふと垣間見える頼りなさが気にかかった。


"……蘭子?"

「あ、うん。ごめん。」

信号が青に変わっているのに、数秒遅れて気がついて横断歩道を渡りつつ、やはり心に靄がかかる。


「…(こう)。」

"うん?"

「あの2人、凄くすれ違っている気がする。」


”え。そうなの?
依織が虜になってる女の子を視察して欲しかったんだけど、それは予想外だな。”

「やっぱり。本音はそこなんでしょう。
皇はいつもタチが悪い。」

ム、として文句を伝えても軽くかわす男は確かめるように「そうかあ。」と呟く。


"蘭子。青砥さんの相談相手になってあげたら?"

「…私にそんなの向いてると思う?」

"まあそう言わず。
依織に、蘭子の連絡先を青砥さんに伝えるように言っとく。"


「…それは大丈夫。」

"え?"

「プライベートの連絡先書いて、皇のと一緒に私の名刺も渡してきた。」


自分の行動を思い出せば、やはり溜息しか出ない。

あまり踏み込みすぎない方が良いと思っていたのに。大体、この男が仕組んだことから始まっている。



"…蘭子は結局優しい。"

「何。馬鹿にしてるの。」

"いや?すげー好き。"

嬉しそうに、そういうことを告げる時だけこの男は口調が少し荒くなる。


「皇もでしょう。」

"ん?"

「那津君、フリーになったし。
過去のこともあるから心配なんでしょう。」


そう告げたら図星だったのか「あ、部下に呼ばれてるわ」と不自然に電話を切られ、少し笑った。




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