朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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「なんでちゃんと言ってから
出かけてくれないんですか。」
「本当のこと言ったら、お前気遣うだろうが。」
「……」
的確に図星をついた男に、押し黙ってしまう私は甘い。
香月さんが帰られてから相当経った後、何の慌てた様子も無いまま、那津さんは事務所に戻ってきた。
「面白いだろ、あいつ。」
「…とても綺麗で、素敵な方でした。」
「あの鉄壁の女を揺さぶれるのは
多分、皇しか居ない。」
「……、」
愉快に告げた男の言葉で、やはり相当、香月さん夫妻と仲が良いのだと感じた。
そのままキッチンの冷蔵庫を開けた男は、
「え、一応女子会でスイーツの1つも無し?」
「一応ってなんですか。
ありましたけど全部2人で食べました。」
「…残業させるぞお前。」
「パワハラですか。」
「まじで現代の部下の扱い、むず。」
つまらなさそうに、キッチン横のパントリーからお菓子を探しているこの男は、実は割と甘いものが好きだ。
子供みたいに真剣に探す姿を見つめていたら、それだけでツンと鼻の奥に響く痛みがある。
ついさっき、那津さんが帰ってくる直前に交わした会話を意識なんかしなくても思い出してしまった。
”青砥、久しぶりだな。"
その声一つで、
直ぐにあの日に引き戻される。
こちらへお伺いを立てるかのような、探りを入れるかのような言葉が続けて鼓膜を叩いた。
"予定してた休職期間が、あと数日で終わる。
一度、会社に面談に来ないか。
あの件なら、コンペも終わって
うちに正式に決まった。
先方の横溝さん、
「やっぱりお前をアカプラに」って言って下さってる。
復職に向けて、俺も勿論協力する。
青砥、戻ってこい。"
課長の言葉全てを聞き終えても、
”自分”を必要とされてる気は全くしなかった。
重さも、何も、感じられない。
心が何一つ、動かない。
「……その?」
異変に直ぐ気がつく男が、チョコレートの箱をテーブルに置いて、突っ立っている私に近付いて来た。
私はこのお人好しの男から、
優しくて、大切に留めたくなる言葉を
あまりに沢山、受け取りすぎたらしい。