朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
スマホを握る手が、震えていた。
もう、顔もひとしきり濡れ切って、
ぐちゃぐちゃだ。
「香月さん。」
"はい。"
「自惚れ、でしょうか。この言葉は、なんだか、」
___私に、伝えてくれているように見えてしまう。
"…いえ、自惚れじゃないです。"
ふ、と軽い息遣いと共に優しい否定が伝えられた。
そして、あの男と香月さんの旦那さんが交わした会話を教えてくれた。
『皇、悪い。やっぱ今送ったやつボツ。』
『え、なんで。無理。
俺もう気に入って、上に通そうとしてるけど。』
『おい馬鹿!!ラフだって言っただろうが。』
『めちゃくちゃ良いのに。何が駄目なの。』
『…私情を入れ過ぎた。』
『は?』
『これを伝えたい誰かを、思い浮かべ過ぎた。
全然、企業から消費者へ向けた感じになってない。』
『……依織。お前、愛しいな。』
『しばく。』
聞き終えたら当然、涙なんかもっと出てくる。
溢れて溢れて、どうしようも無い。
この気持ちの折り合いの付け方が分からない。
____会いたくて、たまらない。
言葉をいよいよ出せず、恥ずかしく鼻を啜る音ばかり香月さんに伝えてしまう。
それから暫くして「青砥さん。」と優しく包むように呼びかけられた。
"…前にも、お伝えしました。
弱いともがく青砥さんは、
ちゃんと毎日、輝いています。"
そうだろうか。
前に毎日、進めなくても。
立ち止まって、
もしかしたら後退する日があっても。
私はちゃんと、輝きを放つ人間でいられる?
"そしてごめんなさい。先に謝ります。
私はやはり、自分で考えた結果、
それを相手に伝えるべきだと思ったら、伝えます。"
「…はい、?」
"__青砥さんは、復職ではなくて、今日、きちんとけじめをつけて新しく頑張るつもりだと。
那津君に伝えました。
それを聞いてどうしたかは、あくまで想像の話ですが、電話はそろそろ切った方が良いかと。では。"
こんな愛想の無い女で良ければ、
またお茶しましょう。
最後まで凛とした、あの人の背筋の伸びた綺麗な姿勢にぴったりの声で告げられて、何か返そうとした時には通話が切られていた。
よく分からない時間帯に、地下鉄の入り口近くでぼろっぼろの顔でスマホを握っている女は確実に怪しい。
とりあえず雑に頬を濡らす涙を拭って、
電車に向かおうとその足を踏み出した時だった。
「その。」
全ての音が、突如として遮断される。
その中で、自分の鼓膜を揺らすたった1人の男の声を聞き間違えることは、きっとこれからも無い。