朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
「……なんで、」
「スカウトに来た。」
声の方へ顔を向けたら、当然、
予期した人物が立っていて、私に言葉をかける。
「蘭子に、お前からアシスタント探し頼まれたって聞いたけど。断っといた。」
ここまで走ってきたのか、息を切らして、
触り心地の良さそうな茶色の髪も乱れたままで。
迷惑そうな口ぶりに、視線は自分の足元まで落ちる。
「余計なお世話って思われるかもしれないですが、
那津さん、どんどん無理をされている気がします。
それは、絶対だめです。
もっと、仕事面で那津さんをちゃんと
支えられる人が、「___じゃあお前が良い。」
必要ですと。
そう言い切る前に私の提案を遮った男が、
じっとこちらを真っ直ぐに見据えていた。
「お前が、なって。」
切れ長の心持ち釣り上がった瞳が
私を閉じ込めるみたいな鋭い光を放つ。
「え…?」
その場で固まってしまいそうな気持ちを必死にこらえて、なんとか聞き返すと那津さんはまた一歩私に近づいた。
オフィス街は、この時間は人通りが少ないといえど
流石に無音なわけじゃない。
だけど私には、まるで選び取ったかのように
この男の声だけが自分の耳に入り込んでくる。
「お前以外のアシスタントは、要らない。」
「…どうして。」
「…そもそも何の役にも立たないって、なんだよ。」
「え?」
「ずっと、誰でも出来る仕事だと思って
2ヶ月間、与えてたわけじゃねーわ。」
__"何の役にも立たない私がここに居座るのは、
もうずっと、変なんですよ。"
舌打ちと共に落ちた言葉は、とてもじれったそうで、それをなんとか誤魔化すように男は息を吐き出した。
私の発言を今更掘り返した男は、
「なんでそんな勘違いしたのか分からない。」
と、やはり不機嫌そうだった。
「だって、那津さん、私に本当のアシスタントとしての仕事は全然頼まない、から。」
「俺の仕事にがっつり関わる業務は、お前のトラウマになってるかもって思ったんだよ。
会社でのこと、まだなるべく思い出させたくなかった。」
何それ。
そんな優しさ、ちゃんと伝えてほしかった。
ぱちぱちと目を瞬いたら、
意図せず涙は頬を静かに滑る。
それでもじっと、端正な顔立ちを見つめたら
「分かれや」と荒い口調のままに
ぐい、と袖で涙をぶっきらぼうに拭ってくる。