花を愛でる。
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仕事終わりに少し時間に遅れて向かったのは篠田くん指定の大衆居酒屋。店の中に入り、篠田くんの名前を店員に告げると、案内された座敷の部屋に見覚えのある懐かしい顔が集結していた。
「お、田崎やっと来たな。遅いから先乾杯してたぞ」
「田崎さん久し振り」
お昼にも会った同期の篠田くんと前の部署で上司だった柳さんと荒木さん。柳さんは30後半の既婚者であり、荒木さんは40歳のベテラン社員。歳の離れているメンツだが、このメンバーで昔はよく飲みに行ったこともある。
そういえば秘書課に異動になってからはあまり飲み会に参加していなかったから新鮮だ。席に着くや否や、柳さんに「なにか飲む?」と声を掛けられ、無難にノンアルコールのビールを注文する。
「えー、田崎飲まないのかよ」
「もしかしたら仕事来るかもしれないし」
「そっか、大変だね。好きなの頼んでいいよ。今日は荒木さんの奢りだって」
「おいおい、勝手に決めつけてんじゃねえよ。ま、払ってやるけど」
口に咥えていた煙草を話し、白い煙を巻く荒木さん。部署では兄貴分というか、よく悩みや相談に乗ってくれていた頼りがいのある人だ。
いいな。この人たちなら少しは素を見せられる気がする。
「田崎さん、仕事どう? 社長に虐められてない?」
物腰柔らかそうな柳さんが心配そうに眼鏡の奥の目を細める。
「虐められては……ないです。忙しいことに変わりはないですが」
「ぶっちゃけウチの会社の社長ってどんな人なの? あんまり人前に出るタイプじゃないよね」
彼が出席する会議のほとんどは役員会議や大事な打ち合わせばかりで、普通の社員ならまず顔を合わせることはないだろう。秘書になる前の私もそうだった。
どんな人か。篠田くんの問い掛けに彼を思い浮かべてみるが一言で言い表すのは困難を極めそうだ。