花を愛でる。



私が答えに言い淀んでいるとハイボールを煽った荒木さんが、


「でもさ、田崎ちゃんは秘書似合ってると思うな。しっかりしてるし、スケジュール管理も完璧だったしな。田崎ちゃんみたいな秘書がいたらおじさん人一倍仕事頑張れちゃう」

「え~、俺は嫌ですよ、田崎みたいな秘書。ちょっとミスしただけですっごい説教されそう」

「それは実際に篠田くんが仕事でミスしてたから注意してくれたんでしょう?」


荒木さんと柳さんのフォローに「そうですけど~」と文句を垂らしている篠田くんは私が来る前に相当飲んでいるらしく、舌が全然回っていない。
そうと思えば今度はつまらなそうにジョッキ片手に唇を尖らせる。


「俺は別に、ただ田崎は経理のまんまでもよかったのになって。田崎がいなくなった最初のことは回らなくて大変だったし、秘書なんて秘書課に沢山いるのに」

「なんだぁー? 篠田、田崎ちゃんが社長に取られて寂しいのか?」

「ちょっと、そんなんじゃないですって」


荒木さんの肘で突かれた篠田くんが慌てて否定する。篠田くんもだけど荒木さんも相当酔ってるな。
二人のノリを柳さんと呆れながら眺めていると、異動させられる前のことを思い出した。

あの頃の私は会社に入ったばかりで仕事に熱中していたこともあって色恋に興味なく、そのせいで大学のことから付き合っていた恋人と別れた。
それ以降、男の人と付き合うことはなく、すっかり女性としては枯れてしまったような気がする。

そんな私があの人と関係を持ってるなんて、ここにいる全員が思っていないだろう。


「けど、本当に向こうで嫌なことがあったら俺らに言いなよ。いつでも相談に乗るし、離れても仲間だから」


唯一酔っていない柳さんからの言葉は本当にありがたく、素直に頷くとまた彼が優しく微笑む。


「いや、分かんないっすよ~。もしかしたら田崎の方が秘書課の女子虐めてるかも~。なにせ『鉄の女』だし」

「ったく、女の子に『鉄の女』なんてあだ名付ける方が虐めだろう」

「じゃあ荒木さん、田崎が笑ったところ見たことあります?」

「ええっと、それはー……」


あからさまに明後日の方向を見た荒木さんにはあと溜息を吐く。



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