花を愛でる。



「田崎さん?」

「あ、すみません。それで私はどうしたら……」

「田崎さんにお願いしたいのは……彼への説得です」


彼女の口から飛び出した「説得」というフレーズに一瞬言葉を失う。
せ、説得は……


「き、厳しいと思います。彼、私の言葉にも聞く耳持たない感じでしたし」

「でも私はもう彼に会う術はないですし……田崎さんにしかお願いできなくて……」

「……」


彼女の言う通り、周りがどれだけ騒ごうが彼自身の気持ちが前を向かない限り問題の解決にはならない。
だから社長が今どのような気持ちでいるのか、それを確認するのを最優先にしたい。

だけど、以前私に早乙女さんとのことを突っ込まれただけであれだけの拒否反応を起こしていたことを思い出すと、改めて真正面から説得するのは正攻法とは思えない。

私は早乙女さんの気持ちを汲んだ上で「分かりました」と頷く。


「でも今の段階で説得をしたところで彼が心を開いてくれるとは思いません。私の方でももう少し情報を集めてみますので少しの間待っていてくれますか?」


早乙女さんのお陰で彼が抱えている問題の形が見えた。その方面で調べたら、解決の糸口も見つかるかもしれない。
そうしたら社長の気持ちも動かすことが出来る可能性がある。

私の返事に彼女は「はい!」と沈んでいた表情を明るくしてくれたのを見て安心する。
社長の問題の他に早乙女さんの期待も背負ってしまったけれど、今まで壁にぶつかっていた私からすると大きな一歩となったと思う。

帰る際に吉川さんから「この間ご迷惑をお掛けしたお詫びです」と菓子折りを受け取ってしまった。
帰宅して中を確認すると有名パティシエ店の洋菓子詰め合わせ。気になって値段を調べようかと一瞬思ったが、やめた。


「(やはりついていけないな、向こうの世界は……)」


菓子折りは母に大いに喜ばれた。



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