花を愛でる。



「すみません、職場だとしっかりしないとっていう意識が強くて自然と顔が強張ってしまうみたいで。これでも表情筋を柔らかくしようとは思っているんですが」

「え、それで?」

「人を怖がらせたいわけじゃないんですが。何も楽しいことがないのに笑っていられる篠田くんを見習いたいぐらい」

「今、何気に俺の悪口言ったな!?」


しかし本当のことで、普段仕事で気を張っているからか、プライベートは意外とずぼらだったりする。未だに実家暮らしなのも母親に料理や掃除などを任せているから、なんて流石に言えないが。


「あーあ、田崎ちゃんってマドンナを失って、俺たちはこれからどうしたらいいんだ?」

「田崎がっ……マドンナ……!」

「実際に今人が足らなくて困ってるんだよね。これは田崎さんに言っても仕方がないんだけど」

「経理志望が少ないのはアレだろ? 経理なんかしてたらイケメン社長と関わり持てないから」


やけくそと言わんばかりに吐き出した篠田くんのことを三人係で慰める。やっぱりここも、あまり社長に対してはいい印象を持っていないようだ。
この三人に彼のことを相談するのは辞めておいた方がいい。きっといい方に向かない気がする。


「(秘書として出来ることはしたいけれど……)」


実際に彼はそれを望んでいるんだろうか。





「よっしゃ~、二件目行くぞ~」

「荒木さぁん、酔いすぎですよぉ~」

「俺は帰りますからね。家で妻と子供が待ってるんで」

「くっそ~。俺も嫁が欲しいぃ~」


酔っ払った荒木さんのことを支えながら篠田くんが「恥ずかしいんで大声上げないでくださいよ」と困ったように漏らす。
結局みんなのノリに釣られて私もお酒を飲んでしまった。というか篠田くんが勝手に注文するから。

ちょっと飲みすぎた。気を付けていたはずだったのに。私はここで失礼しようと彼らに告げようとすると鞄の中に入れっぱなしだったスマホが震えていることに気が付いた。
鞄から取り出し、画面に表示されている名前に目を凝らす。すると一気に酔いが覚めていった。


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