花を愛でる。
私は手に持っていたファイルのページを一枚捲った。するとそこに記事と一緒に掲載されていた画像に目を奪われる。
そこに映っていたのは青蘭色のロックグラス。以前、誕生日プレゼントとして彼から貰ったものと酷似している。
私がその画像を凝視していると、向かいに座っていた黛さんがふと言葉を零した。
「遊馬さんは……本当に心優しい方で家族でもない俺のことを気遣ってくれて、昔は俺も“遊馬くん”なんて呼んで慕っていました。慕っているのは今も同じですけど」
「……仲が良かったんですね」
「まあ、仲が良いというか……兄がいつもご迷惑をお掛けしていたのでその尻拭いを俺がしていた関係で交流があったって感じですかね。遊馬さんの作るガラス工芸を見て兄も挑戦したんですけど、ガラス工芸は繊細な技術が用いられるので全く上手くいきませんでした」
「……」
彼のミルクティー色の前髪の隙間から除く細い目が、昔のこと懐かしむような色をしていた。
「俺も立場的に遊馬さんと同じなので、最初は秘書になって兄の傍につくと相談したときは心配してくれて……弟だから、兄を立てるだけの人生でいいのかって」
「……」
「俺の気持ちを知ったら応援してくれましたけど。でも少なからず、遊馬さんはそうじゃないのかなとは……」
父親に敷かれた人生というレール。優秀な兄という存在。
彼の優しさの裏に隠された、心の隙間。
あと少し、あと少しで答えに辿り着けそうな気がする。
「私と黛さんが初めて会ったとき、あのパーティーで」
「うん?」
「あの時、黛さんに対する社長の態度っていつから」
突き放すような冷たい目、応援すると言った黛さんの夢を、貶するような……