花を愛でる。
「……きっかけはなかったですが、気が付けば距離を置かれていたように感じます。もしかしたら兄さんなら、何か知っているかも」
「黛会長が?」
「遊馬さんのことを一番分かっているのは、なんだかんだずっと隣で見てきた彼ですから。俺の方から少し話を聞いてみます」
「そんな、黛さんまで……」
アトリエのことを教えてくれただけでも十分だったのに更に調べてもらうなんて。
申し訳なく思っている私に彼は首を横に振った。
「遊馬さんのこと気になっていたのに、第三者の俺なんかが踏み込んでいい問題じゃないって頭のどこかで片付けてた。でも遊馬さんが何かに悩んでいるとしたら、今までお世話になったお返しじゃないけど力になりたいって思うから」
「黛さん……」
早乙女さんも黛さんも、彼に関わった人みな、彼に感謝し力になりたいと思う。
彼の本音が、素がどうであれ、彼らを動かしたことに間違いはないはず。
そして私も……
「お願い、してもいいですか?」
「勿論、またご連絡します」
「宜しくお願いします」
彼に向かって深く頭を上げると彼が私を労わるように「やめてください」と笑う。
黛さんはどちらかというと黛会長よりも社長に似ていると出会った当初から思っていた。
母が倒れた時に自分の仕事よりも私を病院まで送り届けることを優先してくれた社長の優しさと、常に自分よりも周りを気遣う黛さんの優しさ。
何よりも、大切にしたいと思う。
「では何かお礼を……私にできることなら……」
「お礼か……」
んー、と目を閉じてお礼を考えている黛さんの顔を観察する。やはり恐ろしいほど整った顔だな。目を伏せると眉毛の長さも相まって、思わず凝視してしまう。
と、
「それじゃあ、同じ職業のよしみでこれからは敬語はやめにしませんか? 同じ歳ですし、必要ないかと」
「え、私は大丈夫ですけど」
「前は田崎さん、あんまり馴れ馴れしくすると嫌われてしまうかなと思っていたんですけど、ここは遊馬さんを救う同志として」
「……」
「というのは建前で、田崎さんとも仲良くなりたいなって」
黛さんは私から見ても同世代なのに受け答えもしっかりしていて適格、それにあの黛会長の秘書をこなすという仕事の出来で、彼に対する感情は尊敬の念が大幅を占めている。
そんな彼からそう言ってもらえること自体、勿体ない話だ。
「……わかりまし、わ、分かっ、た……」
「ははは、凄くぎこちない」
「すみません、慣れてなくて」