花を愛でる。



≪何故ワンコールで出ない。俺をいつまで待たせるつもりだ?≫

「え、あの……どちらさまでしょうか」

≪は? 俺の声が分からないだと?≫


正気なのか?と問われ、着信に出てしまったことを酷く後悔した。
声自体は聞き覚えがあるものの、電話越しだからか声の持ち主は曖昧だ。しかしこの高圧的な態度を取られて理不尽に感じることは人生で二回目である。

もしかして、と、


「黛会長ですか?」

≪なんだ、分かってるじゃないか≫


電話越しからでも分かる暑苦しく上から目線の口調は明らかに黛会長のもので間違いない。
しかし何故彼から電話が掛かってくるのか。どこから私の個人情報が洩れているんだ。


≪何故俺がお前の連絡先を知っているのか気になっているようだな。俺様にかかればこのようなことたわいもない≫

「はあ……」


深くは突っ込まない方がいいんだろうか。というか、出来ればこの人とは相性が悪いし、この間のことを思い出してしまうから関わりたくないのだけど。
片手にスマホを持ちながら私はPCの電源を落とす。しかし次に聞こえてきた声にデスクを片付けていた私の手が止まった。


≪ところでお前、遊馬の周辺のことを探っているらしいな。弥に聞いたぞ≫

「っ……」

≪自分だけでは力が足りず俺に助けを求めるなど、この間の威勢の良さは一体どこへ消えたんだろうな≫


黛さん、社長のことを早速話してくれたのか。しかし彼とは対立してしまった手前、このように悪態をつかれてしまうのは想像がついていた。
やはりそう簡単には教えてくれないか。そう考えていた私に黛会長は低く、そして命令する用に言葉を発した。


≪単刀直入に言う、この件からは手を引け≫

「……はい?」

≪手を引けと言っている。何も知らなかったことにして得た情報全てを忘れろ≫


黛会長から告げられた言葉に戸惑いながらも反論する声が震えていた。


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