花を愛でる。
私がそう動き出そうとした時だった。
「っ……え?」
急にドレスの裾を引っ張られ下を向くと小さな女の子が今にも泣きそうな表情を浮かべて私のことを見上げていた。
突然の出来事で一瞬状況を掴めなかったが、周りに親がいないところを見るとこの女の子はもしかしたら迷子なのかもしれない。
彼女に視線を合わせる為にしゃがみ込んだ私は「大丈夫?」と、
「お父さんやお母さんは?」
「パパ……ママぁ……」
「(パニックになって話せなくなってる……)」
私自身子供と触れ合う機会が少なくてこういうとき何を言って安心させればいいのか分からない。だけど私が慌てているとこの子だって不安になるはず。
一度落ち着いて。そしてもし社長ならどういう対応をするか考えるんだ。
と、
「あ! ママ!」
「え?」
少女は私のドレスから手を離すと突然走り出す。目で追えば母親だと思われる女性に抱き着いているのが見えた。どうやら母親を見つけて駆けだしたようだ。
母親は私の顔を見ると申し訳なさそうに頭を下げた為、私も大丈夫であることを手ぶりで伝える。
とりあえず無事に親御さんが見つかってよかった。
そうだ、吉野さんは……
「あれ?」
親子から視線を戻すとそこにいたはずの吉野さんの姿がなくなっていた。もしかして私が目を離した隙に移動してしまったのかもしれない。
急いで探さないと。まだ遠くに行っていないといいけれど。
慌てて場所を変える為に動き出そうとしたところ、「田崎さん!」と名前を呼ばれて振り返る。
「黛さん!」
「良かった、今連絡をしようと思って。吉野さんが会場から出ていくのが見えたので外を探しに行った方がいいかと」
「本当ですか?」
「ええ、会場にいると直ぐに囲まれてしまいますから。外での方が話しかけやすいかもしれません」
確かにその方がゆっくり話すことが出来そうだ。黛さんに感謝を告げると私は吉野さんを探しに会場を後にした。
会場を出るということはお手洗いか外の空気を吸いに行ったんだと思うけれど、もし客室を予約しているのだとしたら休憩を取りに行った可能性もある。
とりあえず出来るだけ早く見つけて声を掛けないと。
「(お手洗いの方にはいなかった。外の空気を吸いに出たとしたらホテルの中にもいないかもしれない)」
ホテルの敷地内で外の空気が吸える場所……
「もしかして……」
確かこのホテルには広い中庭があったはず。バラ園などもあって有名という話を黛さんからの話にあった。