花を愛でる。
俺が何も話さなかったのも悪かったけどね、と私の髪を優しく撫でた社長にもう一度「すみません」と謝罪を口にした。
結局二人の間に亀裂を入れてしまう結果になってしまった。勝手な行動なんてとらなきゃよかったかもしれない。
空気だけで私が沈んでいるのが分かったのか、社長はそれ以上私を責めるようなことはしなかった。
「たまたま用事があって来たけど、まさか花もいるとはね。弥から聞いて驚いたよ」
「弥って、黛さんですか?」
あれ、前は下の名前で呼んでいなかった気が。しかし彼は「そうだよ」と淡々とした口調で返した。
「黛姓は過保護なやつが多いのかね。花と恭一が一緒にいたのは気に喰わないけど」
「それは社長が黛さんたちによくしてくれたから、お礼がしたいんだと思いますよ」
「俺が? 弥ならまだしも、恭一に優しくした覚えはないけどな」
「いえ、そんなことは……」
きっとこの人に覚えはなくても、黛会長は彼から多いに影響を受けていることが見ていて分かる。
彼が今の地位に辿り着けたのも、ライバルだと思っていた社長への闘争心があったからこそなのだろう。
社長はいつもそうだ。他人に対する優しさを自分では自覚していない。彼にとってそれは当たり前のことだから。
存在しているだけで他人に影響を与えることが出来る。そういうところに惹かれる人は多いのだ。