花を愛でる。



「……本当は少し、救われてたんだけどね。俺は」

「え?」

「さっき、兄さんに向かって言ってくれたこと」


さっき?


『どうして向上心がなかったのか、考えたことはないんですか?』


もしかして吉野さんを前にして口にしてしまったアレだろうか。正直言うと頭に血が上ってしまって思わず出た言葉だったから後から発言を後悔していたのだけど。
だけどそれは思いのほか、社長に対しては評価が高かったようだ。


「格好良かったよ、花」

「っ……」

「あれ、花って意外と分かりやすい?」

「は? 別に喜んでいませんが?」


普段の落ち着いた笑い方じゃなくて、彼がけらけらと声を上げて笑った。
彼の素の部分を垣間見て、また嬉しいと感じている私がいる。

あぁ、どこまでも狡い人だ。だけど、この人についていくと決めたんだ。
心の波が穏やかになる。きっと大丈夫。どこかそう確信している。

社長の頑張りはきっと報われるはず。



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