花を愛でる。



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「なるほど、それでこの間連絡をくれたんだ」


カフェのテラス席に座っていた私に「はい、アイスコーヒー」と手渡してくれた黛さんに静かに頷く。


「お陰で彼が納得する会場を押さえることが出来ました。あんな大きなところで何をするつもりなんでしょうか?」

「田崎さんは何も聞いてないんだ?」


隣の席に腰を下ろした黛さんにお金のことを聞くと有無を言わせないような笑みを向けられ、黙り込むことしか出来なくなる。
お金持ちの彼からすればコーヒー一杯くらいどうってことのない値段なのだろうけど。

どうして休日に黛さんと二人でお茶しているのかというと、きっかけは数日前に遡る。
社長に頼まれた会場の件で彼に相談を持ち掛けたところ、黛会長がよく主催のパーティーを開くとのことでおすすめのホテルを教えてもらったのだ。

そこで今までお世話になったお礼と言ってはなんだが、この間黛さんとした約束を果たそうと二人で映画を見に来た……のだが、


「(思ったよりもデート的な雰囲気で吃驚したな……)」


以前の黛さんの態度からなんとなく察していたが、やはり仕事柄二人で出掛けることになっても堅い雰囲気しか出せないのではと考えていた。
でも休日だからか黛さんは普段の秘書であるときの態度は見せず、一人の男性として私に接してくれた。

映画の普段私が見ないジャンルだったが、興味深いものだった。シリーズものだと聞いたので、家で母と一緒に見てみようと思う。


「田崎さん?」

「あ、すみません。私は何も聞いてないですね」


映画館を出たあとに入ったカフェテリアで最近の社長の動向を聞かれたのだが、やはり彼の行動の意味を理解するのは困難だ。


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