花を愛でる。
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時間がないこともあって、髪やメークからドレスの着用まで全て同時作業で行われ、目まぐるしい時間が過ぎた。
眼鏡をしていないことで自分が今どのような姿でいるのか見当もつかず、徐々に不安が募る。
会社用にしていたメークを落とし化粧水から付けられ、一つに結んでいた髪も解かれてはアイロンで毛先までを綺麗に巻かれた。
今ここにいるのは100%他人の手によって作られた私だ。
「向坂様を呼んできますのでここでお待ちください」
漸く支度が終わり、椅子に座って一息つく。パーティーの装いをするだけでここまで体力を使う羽目になるとは。世のご令嬢たちは毎回こんな苦労をしているのかと思うと少し哀れに思った。
未だに視界が落ち着かないのは眼鏡を掛けていないせいだと気付くと、スタッフの女性に眼鏡を場所を尋ねる。
暫くして手元に返ってきた眼鏡を一息つき、ゆっくりと耳に掛けた。
「え……」
鏡に映った自分の姿を見て絶句する。その姿は篠田くんに呼ばれる「鉄の女」からは遠い印象を受けた。
サテン生地の青いドレスに身を包んだ私は普段の地味な姿から一変して、華やかで人を惹きつけるオーラを纏っていた。
「な、な……」
本当にここに映っているのは私なのだろうか。至近距離で鏡と向かい合っていると背後から近付いてくる足音が耳に届いた。