花を愛でる。
遅めの夕食を取った後は漸くドレスを脱ぎ、最後の気力を振り絞って浴室へと脚を動かした。
しかしまさかの浴室の壁が全てガラス張りという状況に、私は部屋に来た時よりも衝撃を受け言葉を失う。
「(ありえない、これが金持ちの普通なの?)」
社長がこの広々とした浴槽に使っている姿は想像できるが、いくら高層だとはいえ周りから丸見えのこの状況で安心してお湯に浸かるなんて出来るはずがない。
結局外を気にするあまりシャワーを浴びるだけでゆっくり出来なかった私はパーティーの疲れを残したままキングサイズのベッドに身体を横たわらせた。
「(ドッと疲れが来たな……)」
この部屋に来て漸く落ち着けた気がする。バスローブに身を包み、息を吐き出すとあお向けになって天井を見上げる。
なんだか長い一日だった。一日中接待をしているような、気が抜けない場面の連続で。社長は今でも接待で忙しいのだろうが、あの人には休める時間が用意されているんだろうか。
今回、彼に付き添って分かったのは秘書としての圧倒的な経験不足。向坂グループの御曹司の秘書を務めるものとして、今回の経験はこれからに活かすことも出来るだろう。
「そういえばあの人……」
途中、少しだけ話した男性の顔が頭を過り、私はベッドから体を起こす。
しかし直ぐに名刺が社長に奪われたままであることを思い出した。
「(社長は彼と知り合い? やけに口調が厳しかったような気がするけれど……)」