花を愛でる。




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今朝のことを踏まえて、直接社長に彼を取り巻く環境について尋ねるのは控えた方がいいのかもしれない。
しかしそうなるとどこから情報を得たらいいのか。ネットを駆使して調べられることも限界があるだろうし。


「すみません、今満席でして。10分ほどお待ちいただいても?」


午後の業務の前に遅めの腹ごしらえをするためにやってきた定食屋。入口で店員からそう言い渡され、時間に余裕があることを腕時計で確認すると「大丈夫です」と近くにある順番待ちの椅子に腰かけた。
前に篠田くんからおすすめされた定食屋で、その時に割引券までもらってしまったので都合がいい時に来てみようと以前から考えていた。


「(篠田くんとはタイミングが合わなくて残念……)」


いつかまた前の部署のメンバーで食事でも出来たらいいのだけど。
そんなことを考え物思いに更けていると私の後に一人の男性客がやってきて、私同様に満席である説明を受けていた。

もう直ぐお昼休みも終わるのにやって来る人もいるんだな。すると目の前で腕時計を眺めていたその男性がふと座っている私の方へと視線を向けた。


「え、」


この人まさか、私がそう勘付いたのと同じく彼も私に気付いたのか、驚いたように目を丸めていた。


「えっと、確か田崎さん……でしたよね?」


お久しぶりですと目を細めて微笑んだその男性は、先日彼に同伴して参加したパーティーでお会いした黛さんだった。


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