花を愛でる。
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「照り焼きチキン定食を一つ。黛さんはどうされますか?」
「え、えっと、それじゃあ生姜焼き定食を」
注文を済ませると前に座る黛さんを観察する。席に案内されてからメニューを見て注文するまでの間、辺りを何度も見渡したりメニュー表を物珍しそうに眺めていたり、とにかく落ち着きがない。
その上、彼が身に着けている上質そうなスーツや腕時計などのせいで他の客とは違う空気を醸し出しているからか、明らかにこの定食屋から浮いて見える。
「実はこのような店に来るのは初めてでして。田崎さんが一緒で心強いです」
「そう、だったんですね」
やはりこの人も社長と同じ、上級階級の人間ということか。
やけにそわそわしている黛さんに心の距離を感じながらも一つ咳払いをすると話題を切り出した。
「実は私、黛さんにお聞きしたいことがあって」
「向坂さんのことですよね」
「え……」
まるで私の考えを見透かしていたかのように口にしようとした言葉を言い当てた彼に驚く。
黛さんは余裕たっぷりに微笑むとテーブルに両肘を置いた。
「実は俺もそのことをお話ししたくて機会を見て田崎さんにご連絡する予定でした」
「でも私の連絡先なんて」
「いただいてますよ、この間のパーティーで名刺を」
そういえば黛さんの名刺は社長に奪われたままだが、私が渡した名刺は彼の手に渡ったままであることを思い出した。