花を愛でる。



明日の会議の資料を纏め終わると帰りの準備を進める。今日は帰るときに本屋に寄って気になっていた参考書を買うつもりだ。
会社を出た時、鞄に入れていたスマホが震える。この時間帯だと母親からの夕食の追加食材を買いに行ってほしいという連絡が多いのだが。

しかし画面に表示されていたのは母の名前でもなく、名前のない差出人だった。


「(誰……この人……)」


恐る恐るメールを開き、その内容に目を通す。


【今すぐにこの住所に来い】


明らかに怪しさを感じるその文面の下には謎の住所が書かれていた。いかにも迷惑メールだと思われるためスルーしようとスマホの電源ボタンに指を掛ける。
だがその住所の下に書かれている文章を目にした瞬間、動きが止まる。


【向坂遊馬について知りたいことがあれば教えてやる】


どうして迷惑メールにあの人の名前が……


「(落ち着いて、あの人の名前が出てくるってことは私が彼の秘書だって分かって送ってきているはず)」


だとしたら相手は仕事の関係者? 彼のことをよく思っていない人物からの脅迫のメールにも思える。
一度社長に連絡して、彼の安全を確保してからメールの差出人を特定しなければ……


「……」


それが、秘書としての正しい行動だと思うのに。
私は気が付けばその住所をネットで調べていた。



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