花を愛でる。
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「え、ここって……」
ネットで調べた時からまさかとは思っていたけど、辿り着いたビルを見上げて呆気に取られる。
何故なら辿り着いたそのビルの名前は誰もが知っている財閥の名前が付けれているからだ。
黛オフィスタワー、黛グループの本社が入っている高層ビルである。
恐る恐るビルのエントランスを通る。広々としたロビーに場違い感を感じながらも受付の女性に話しかける。
「あ、あのT/Sホールディングスに田崎と申します」
「田崎様ですね、少々お待ちください」
受付の女性が電話でアポの確認を行っている隣でメールの差出人のことを考える。
あの差出人がこの会社の人だとすると、社長のことを詳しく知っている人物は限られてくる。
ここに来てからの私の予想が更に鮮明さを増してくる。
暫くして女性の社員が私のことを迎えに来て、「こちらです」と会社を案内してくれる。そしてエレベーターでビルの最上階まで昇り、辿り着いた部屋を見て私の予想は確信に変わる。
案内してくれた女性社員が掃けたのを確認した後に意を決して扉をノックすると暫くして「入れ」と引く声が聞こえた北。
目の前に扉のドアノブに手を掛けるとゆっくり重い扉を開き、視界が開けると目に入ってきたのは豪華なデスクの向こうで立派なオフィスチェアに腰掛ける男性。
そしてその隣に立つのは昼食を一緒にした日以来に見る黛さんだった。
「よく来たな、田崎花。待っていたぞ」
低い声が部屋に響き、椅子に座っていた彼がゆらりと立ち上がった。
「まさか本当にのこのこと顔を見せに来るとはな。向坂家の次男の秘書がここまで警戒心が薄くて大丈夫なのか?」
「それは兄さんがメールに遊馬さんのことを書いたからでしょ。ごめんね、田崎さん。急に呼び出しちゃって」
「ふん、利用できるものを利用して何が悪い。お前も俺の秘書ならそれくらいの気持ちでいてほしいものだな」
やはり黛グループの所縁があり、社長のことにも詳しく、何よりもあの黛さんが「兄さん」と呼ぶ人物。
それに当てはまるのは私が知っている中で一人だけ。
「黛、恭一さんですね」
そう名前を呼ぶと、彼がにやりと口元を歪めた。