花を愛でる。
「そうだ、俺こそがこの日本を支える黛財閥の現当主、黛恭一だ。田崎花、お前は前世で随分と徳を積んだな。この俺をこんな間近で見られる機会などそうないぞ」
「え……」
のけぞるほどに高笑いを上げる彼に思わず呆気に取られる。今まで写真でしか見たことがなかったが、こんなにもインパクトがある性格だったのか。
戸惑っている私にゆっくりと近付いてきた黛さんが私の耳元でこっそりと呟く。
「すみません、この間田崎さんと昼食を共にしたことを話すと興味を持ってしまったらしくこんなことに……兄を止められなかったのは俺の責任です。本当に申し訳ない」
「い、いえ……」
「おいそこ、何を話している。俺を放置するとは良い度胸だな」
鋭い眼力と威圧感で思わず「すみません」と謝罪の言葉が出てしまう。
話している言葉自体は子供っぽく傲慢だが、彼の纏うオーラは人の上に立つ者が持つそれで間違いなかった。
その威圧感に負けぬよう、しっかりと彼の顔を見据えると質問を投げかける。
「黛……会長、どうして私をここに呼び出したのですか?」
「待て、もう少しこっちにこい。顔を見せろ」
「は、はあ……」
何なんだと一歩前に出ると彼はデスク越しにぐっと顔を近付けてきた。
うちの社長の淡いブラウンの髪色とは違って赤が混じった濃い茶の髪を刈り上げている黛会長はその分堀の深い顔立ちが目立ち、輪郭もしっかりしている。何よりも見つめているだけで吸い込まれそうになるくらいに目力が鋭い。
弟の黛さんに似て整った顔立ちだが彼の纏う圧倒的な強者のオーラがその良さを掻き消しているようにも感じる。
彼は私の顔をまじまじと見つめるとふむと自分の顎に指を這わせる。
「お前、本当に遊馬の秘書か? その割には地味だな」
「なっ……」
「まあアイツの考えだから何かあるんだろうが、その趣味には全く共感しないな」
初対面で凄く失礼なことを言われたような。思わずずれ落ちそうになった眼鏡を掛け直す。
確かに私は地味で華はないが、それを他人に、それも初めて会った人に言われる筋合いはない。