花を愛でる。
何とか言い返しそうになる口を社長のメンツを保つために抑え込む。
「それで、私をここに呼び出した理由は?」
「ん? 特にないな。ただの興味だ。この間は弟が世話になったと聞いてな」
「……では、もう帰ってもいいということでしょうか?」
「あぁ、実際に会えばもっと興味が湧くと思っていたが想像以上に普通の女で白けていたところだ」
「……」
私、我慢しろ。ここで私が言い返したところでこの人の気持ちが改心されることはないだろうし時間の無駄だ。
それに私が問題を起こせば嫌でも社長の耳に届く。彼自身のことは詮索しないように忠告を受けていたのに彼の知人である黛会長の元を訪れていたと知られれば、また彼からの信頼を落としてしまう。
「兄さん、その辺に。わざわざ脚を運んでくれたのに」
「ふん、そもそもパーティーの時にその女と挨拶に来なかったアイツが悪いだろう。俺の会長就任パーティーだぞ」
「それは単に遊馬さんに兄さんが嫌われてるからだろう」
「違うな、あれは俺に合わせる顔がなかったんだ。どれだけ努力したところで二番手のアイツはグループのトップには立てない。この若さでグループの代表となった俺に負けたのも同然」
私が我慢をすれば、何事もなくこの場を去れば、
「俺に負けた面を拝めるいい機会だと思っていたのにヤツは尻尾巻いて逃げやがった。俺に恐れをなしたんだ。所詮その程度の男だったということだ」
……でも、
「二番手なんかじゃありません」
ここで言い返さなかったら、私は彼の秘書失格だ。