花を愛でる。



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一度秘書課に戻り事務仕事こなした後、社長室に向かう途中に見覚えのある背中を見掛け、思わず遠回りしようと踵を返す。
が、しかし頭にアンテナでも張っているのか、私の存在に気付いたその人がこちらを振り返り大声で名前を呼んだ。


「よう田崎! 久しぶりだなー!」

「篠田くん」


大きく手を振りながら近付いてくる圧の強い人物を無下にすることが出来なくて、避難することをやめて彼と落ち合うことに。
篠田くんと呼んだ彼は人懐っこい笑顔を浮かべて私の肩を強めに叩いた。


「元気にしてた? あれ、顔疲れてないか? いや、前から田崎はこんな感じか。変わってなくて安心したぞ」

「うん、私の篠田くんのそういうところ変わってなくて安心した」


篠田くんは秘書課に異動する前にいた経理部の唯一の同期で、比較的仲良くしていた男の子だった。お人好しで誰とも仲良くなれるところだが、歯に着せぬ発言が飛び出すところがたまに傷だ。
会社内で会うのは私が秘書課に異動してから初めてだった。


「話には聞いてたけど本当に社長秘書やってんだな。知ってる? お前秘書課で顔が怖いから『鉄の女』って言われてるって」

「それ広めてるの絶対篠田くんでしょう。それにそんな顔をしてるつもりはない」

「え、怒った? ごめんごめん」

「篠田くんの『ごめんごめん』は感情が籠ってない」

「嘘、ごめんごめん」


全く直す気がないな。そこまで来るともう諦めの境地だけど。
その変なあだ名のせいで他の社員から距離を置かれているような気がする。


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