花を愛でる。



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社長の知らないところで黛会長と会ったこと、やはり彼には言いづらくて報告しない日々が続いた。
黛会長からの連絡も来ていないのか(または無視をしているのか)、向こうから言及されることもなかった。

弟の黛さんとはあれ以来一度だけ顔を合わせた。会社にまで菓子折りを持ってきて先日のことについて改めて謝罪の言葉を貰った。
彼は一切悪くないというのにどこまでも切実な男性だと思う。私の周りの男がみんな彼のような性格であれば苦労することは少なそうだ。


「本日はありがとうございました。では引き続きよろしくお願いします」

「向坂くんには期待してるよ。お兄さんにもよろしく」

「勿論です」


取引先と握手を交わした社長は「それでは」と去っていく相手の背中が見えなくなるまで頭を深く下げた。
暫くして顔を上げるとふうとネクタイを緩める。


「聞いた? 兄さんによろしくだって。結局目当てはそっちなのかよって」

「……」

「まあ、結局俺のしてることってあの人の手柄になるんだけど」


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