花を愛でる。
病院に到着すると直ぐに母が運ばれた病室へと案内される。そこにはベッドに横たわり点滴を受けている母の姿があり、一目見られたことでどっと安堵が押し寄せてくる。
暫くして白衣を着た医者と思われる男性が私たちの前に現れる。
「倒れた原因は過労による発熱でしょう。倒れたところを直ぐ病院に運ばれたので大事にいたりませんでしたが、この年代は心不全にも陥りやすいですし、特に注意して今後の経過を見てください」
「そう、ですか。ありがとうございます」
彼の話だと先ほどまでは意識があり、ここ最近高熱が続いていたことと嘔吐を繰り返していたことを伝え、今は薬の副作用で眠っているとのことだった。
一先ず命に別状はないことに安心し、今日一日は検査入院するとの医者の判断に素直に従った。
「(よかった……でも私が早く気付いて病院に連れてこれていたら、出先で倒れるようなこともなかったはず)」
私が気付いてあげないと駄目だったのに、そんな後悔ばかりが募っていく。
点滴を受けている母の手を強く握ると「ごめんなさい」とか細い声で何度も謝る。
そんな私の背中を見つめていた社長はベッドの近くのテーブルの置かれている荷物に視線を向けた。
「これは?」
「患者さんの荷物です。救急隊員の方が届けてくださいました」
看護師の声に零れかけていた涙を拭って振り返ると、テーブルの上には私が二年前の誕生日にプレゼントしたブランドもののバッグと、その隣に正方形の白い箱が置かれていた。
社長はテーブルに近付くと「なんだこれ」とその箱に手を伸ばす。
と、
「ケーキです」
「え?」
「私の……ケーキです」
母が昨日、パートの帰りに受け取りにいく為に店に予約したいたことを思い出す。
「誕生日なんです、今日……私の……」
「……」
「昔からうちには父親がいなかったので母は女で一つで私のことを育ててくれて……なのに私は彼女に甘えてばかりで何も恩返しすることも出来なくて……」