花を愛でる。
「ふふ、秘書さんってそういうこと言うんですね。ちょっと怖い人かと思ってました」
「すみません、顔が怖いって言うのはよく言われるんですが」
「あ、そういうことじゃなくて……えっとそのですね……」
逆に気を遣われる方が悲しいくらいに本当に素直な方だな。
少し行動の度が過ぎるくらいで性格も悪くはなさそうだが、彼は彼女に対して頑なに冷たく接するんだろう。
ひとしきり笑い終えると彼女は穏やかに目を細めた。
「自分では大人だって思っていたつもりでも、あの人から見たらいつまでも子供なんでしょう。それを今日は少し実感しました」
「早乙女さん……」
「私なら、遊馬さんのこと分かってあげられる。彼の気持ちを汲み取ってあげられる。そう思っていたんです。そうしたら遊馬さんはこれ以上家に縛られる必要もないんじゃないかって」
今でも目から零れだしそうな涙は彼女がこれまで抑え込んでいた気持ちがどっと溢れ出したもののように感じた。
「だけど……私はやっぱり子供で……あの人のことは支えてあげられませんでした。もう二度と遊馬さんにも、その周りの方にも迷惑はお掛けしません。この度は本当に申し訳ありませんでした。それと」
ありがとうございました。
最後にそう言い残して彼女は東京へ帰っていった。
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駅を出ると立っているだけでやけに女性の視線を集めている社長の姿があった。
彼は近付いてくる私に気が付くと手を軽く振る。
「ごめん、ありがとう助かったよ」
「……」
「田崎さん?」
「……いえ、」
きっとこの人は何かを隠してる。それが何かは私にも分からない。
だけどそれを知るまでは、この人を理解できたとは言えない。
私はこの人を理解したいのか。彼が秘めている得体の知れない何かを知ってまで?
そこに私の私情は含まれていない? 本当に?
この人は私のことを、対等には扱わないだろう。
「いえ、何もありません。彼女、とても反省をしていましたよ」
「……そうか、俺も子供っぽいところを見せてしまったね」
彼の口振りから早乙女さんとの婚約は確かなのだろう。でもそれに彼は反対している。
彼女が言うには年齢差が原因らしいが、それだけが理由とも思えない。
「(隠すなら、最後まで綺麗に隠してほしい……)」
あんな寂しい目をしないでほしい。
貴方が抱えているものから救ってあげたくなってしまうから。