平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
婚約どころか、結婚式のことにまで話が及んでいる。

「偽物の恋人関係なのに……」

リズは、騙している罪悪感に胸がキリキリした。

手紙には、王都での伝統的な婚礼式のことも書かれてあった。グレイソン伯爵家では、代々王城から見える式場で挙式を挙げた……のだとか。

領地の町で婚約指輪を作り、王家が認めた王都の装飾人によって作られた結婚指輪を挙式で贈り合う。

――それは、とても素敵で夢みたいな結婚だった。

庶民のリズには、とうてい想像も付かないくらいに。

「いつか、団長様はそうやって誰かと結婚するのね」

吹き込んだ風に誘われて、ふと幼獣舎の入口から空を見上げた。その拍子に、そんな言葉がリズの口からこぼれる。

どこか白獣と似た、彼女の赤紫色(グレープガーネット)の大きな目に青空が映った。

そこには澄んだ青色が広がっていて、雲が穏やかに流れている。しばらくは良い天気が続きそうだ。これから来る夏の気配も感じた。

リズは、獣騎士団員としてジェドを信頼していた。

でも彼のことを考えると、胸が静かに温かく高鳴るのだ。

「信頼している部下って、こういう感じなのかしら……?」

違うような気もするけれど、考えると途端に分からなくなる。

こうしてそばにいない時に思い返すのに限って、最近は寂しいみたいに胸のあたりがきゅぅっとした。

「毎日、顔だって見ていて、困らされてもいるのにね」
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