平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
ヴォン!と亡霊がこれまでにない怒声を放った。その野太い吠えは、獣騎士団の中で一番大きなカルロと似ていた。

ジェドが、訝って耳を叩く。

《――獣の名だ。人間には聞き取れない》

カルロが、目を向けないまま冷静な口調で教えた。

白獣としての、本来の名。

けれど、それを人間が耳にすることは、できない。

分かったような分からないような顔で、コーマックたちが見合う。まるで知っている仲みたいな――とリズが思った時だった。

《我らは奪われたのだ! 愛し子、我らが娘を人間に奪われた!》

亡霊が怒鳴り声を上げてびくっとした。

《我らが初めて愛した〝我らの娘〟だった! 獣と話せるなど嘘だと嗤った人間どもが、我らの元に捨てていった。それが幸運なる者だと分かった途端、人間は自分勝手に奪っていったのだ!》

幸運なる者……?

一瞬、リズは白獣の女王に『幸運の娘』と呼ばれたことが脳裏を過ぎった。

恐らくは関係のないことなのだろうと雑念を振り払う。亡霊が向けてくる憎悪は本物だ。視線一つにも気圧されそうになる。

ジェドが「ふぅ」と緊張気味に息を吐いた。

「つまり、遠い昔に、白獣が受け入れた一般人がいた、と」

どうにか頭の中を整理した彼が、推測を確認する。横目を避けられたカルロが、頷いた。

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