平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
リズは、くらくらした頭を抱えながら答えた。

忙しくて忘れていたのか、ジェドも何も対策を取らなかったらしい。

帰還した翌日、両陛下と公爵家から代表で、婚約の前祝いの手紙が届いて卒倒しそうになった。

――こちらは、いつでも婚約を承認する用意は整えた、と。

喜んでくれるだろうかというニュアンスで、手紙は書かれていた。

だが、それはとんでもないことだった。

ジェドが、相棒獣のカルロに乗って一つ飛びでリズを連れて行くか、手紙一つで婚約が成立する。

そんなこと、あってはならないのだ。リズとジェドの『婚約予定である』というのは〝ふり〟なのである。

「も、もし新聞で書かれちゃったりしたら、アウト……っ!」

リズは、戻ってきてから気が気でなかった。この町の人たちや、故郷の両親や村人たちに伝わったりしたら大騒ぎだ。

獣騎士団長、ジェド・グレイソン。二十八歳。

グレインベルトの領主にして、現在のグレイソン伯爵だ。彼は、十七歳のリズ・エルマーと恋人同士である。

――という嘘設定の認識が、王都の方では続いていた。

まだ婚約をしていないためか、今のところ恋人云々の下りさえ公表は控えられているようだが……不安である。

「えーと、リズちゃん安心して欲しい」

考え込んでしまったリズを見兼ねて、獣騎士の一人が言った。

「今日の新聞でも、恋人云々だとかは書かれていなかったから」

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