あの日の恋は、なかったことにして
 このあいだまで男の人の肌を知らなかったのに、猪狩くんによって私の体はどんどん開発されていた。


「かわいいよ、すず」
「好き。猪狩くん、好き」

 ベッドの上で、指を絡ませる。
 目と目を合わせ、キスを交わす。

 猪狩くんが私の上に覆いかぶさり、激しい衝動に、頭の中が真っ白になる。

 しばらくふたりでベッドを揺らしたあと、「すずっ」と私の名前を叫んで、猪狩くんが果てた。
 ドキドキと早鐘を打っているのは、どっちの鼓動だろう。

 熱さの引いていく背中を抱きしめながら、心の中が猪狩くんへの愛しさで満ちていくのを感じた。
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