白と黒の執着 ~モブの予定が3人で!?~

◆◇◆

「準備は良い? 二人とも」
「あぁ。兄上」
「大丈夫よブラン」
「それじゃあ、行こうか」


 ブランの合図で聖堂の鐘の音が国中に鳴り響く。


 『白の王子』の正装のブランは私の右側に。
 『黒の王子』の正装のノワールは私の左側へ。
 二人にそれぞれの手をとられて大司教の前へと進み出る。

 緋色の絨毯の上を一歩一歩進みながら。周囲を見れば親しい人たちの姿があった。

 涙を浮かべるお父様、お母様。仲むつまじく寄り添う国王陛下と王妃様。この国の平和のため尽力してくれた宰相に騎士団長。
 ヒロインのあの子には、騎士団員の恋人ができたらしい。

 あぁ。ベール越しでもわかる。みんな笑顔だ。

 ステンドグラスから降り注ぐ陽は柔らかく。穏やかな未来を感じさせてくれた。

「ブラン・クローフィ。ノワール・クローフィと共に、生涯ルディアーヌ・ルージュを愛すると誓いますか」
「我が剣と命に懸けて」
 大司教に問われたブランが聖堂の皆へ向かって宣言する。

「ノワール・クローフィ。ブラン・クローフィと共に、生涯ルディアーヌ・ルージュを愛すると誓いますか」
「もちろんだ」
 肯定するノワールは普段めったに見せない心からの笑顔。

 そんな二人の姿を誇らしげに確認した司祭の温かな視線が私に向けられた。

「ルディアーヌ・ルージュ。貴女は生涯ブラン・クローフィとノワール・クローフィを愛すると誓いますか」

 大丈夫。大丈夫よ前世の私。
 この国は、この世界は。
 もう血塗られた呪いから解放されて。
 希望の物語を紡いでいるの。

 左右の手を繋いでくれている二人の手を握り返して、息を吸い込む。
 私はもう、迷わない。



「――誓います。私は生涯、ブランとノワールを愛し続けます」



 その後、私との誓いのキスの長さを争って、ブランとノワールが微笑ましい兄弟喧嘩をしたのは、ここだけの話。



fin


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