シークレットベイビー 弥勒と菜摘
✴︎



弥勒の生活は、かなりストイックだった。
見た目の隙のない身のこなしは、日々の鍛錬の賜物だった。

弥勒の仕事のスポーツジムは世界規模にあって、それを取り仕切る仕事と、自分では毎日筋トレをかかさない。忙しくてもきちんとして生活を心がけているようだ。

食事も気をつけていて、夜は家で自炊して食べている。メニューは、ほぼ野菜とタンパク質。

弥勒の作ってくれた晩御飯を見て、思わず笑ってしまった。

貧乏でやりくりしていた菜摘の食事とあんまり、変わらないわ⋯⋯ って。
まあ、主食のお肉の値段と、野菜の値段は違うけど。
すなわち出来上がりの味も違うけど。

弥勒の頼んでいる無農薬野菜があるし、冷蔵庫にお肉や魚があったので、


「晩御飯作りましょうか? 」


と聞いたら、


「いいの? 」


と逆に聞かれた。

だから、同じような感じで、量やら質やら気をつけて菜摘が作ったら、もくもくと食べてくれた。


「おいしいね、」


だって。

しかも、思わず言ったみたいに、ホントに美味しそうに食べてくれる。

最低限の調味料の、野菜の味を最大限に引き出した料理は得意なんだ、⋯⋯ 貧乏のお陰で。

それの単価がすべて違って高くなったから、結果すごく上手に出来るんだなと思った。

口にあってよかった⋯⋯ 。
喜んでもらえてよかった⋯⋯ 。

あんまり、もらってばかりだと、心が苦しいから。
ちょっとでも役立てたら嬉しいと思う。
少しでも気持ちを返したいと思う。

(この人の妻だって、わたし。)

婚姻届はホントに出してしまったし。
出生届の欄も、父親と母親の欄に記入したし。
3人は、法的にも実際の家族になった。

ただ、菜摘と弥勒だけが全くの他人、本当の家族になっていないだけだった。


✴︎



ちゃんと感謝してくれる弥勒がうれしい。

作った食事が美味しくて上手だって。
一子が元気に育ってるから。
掃除をしたから。
明るく笑ってたから。

何でもちゃんと見ていて必ず言ってくれる。

だから何でも頑張りたくなる。

一子のおまけみたいにして、ここにいる自分だけど。
弥勒になんの関係もないのに、ついてきてしまうことになった自分だけど。
萎縮せずにいよう。
なんら、恥ずべきこともないのだから。
そう思えるのは、弥勒のおかげかも知れなかった。

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