シークレットベイビー 弥勒と菜摘
✴︎



〈オレは、ニ子も三子も本当に欲しいと思ってるんだけど〉

「⋯⋯ はい?」


洗い物をしていて、リビングで弥勒がぼそっと言った言葉が、菜摘は聞き取れなかった。でも、


「何でもない」


と弥勒は言った。
それから、思い出したように、


「そうだ、
父が今の母と姉とマリアと菜摘。
女性たち4人に、家族の証に宝石を買いたいそうだ」


リビングに戻ってきた菜摘は、


「私、 もらえません⋯⋯ 」


家族の証⋯⋯ 。


「一子にあげて下さい、だって私⋯⋯ 」


泣きそうになって、悪いと思った。
そう言って下さる弥勒のお父さんにも申し訳ないような気がした。


「そんなこと思わなくていいのに」


と弥勒が菜摘を見ながら、ちょっと困ったように言った。


✴︎



弥勒が電話を切った。


「オレ、今からご飯食べてくるね」

「何時ごろ帰りますか? 」

「そうね、3日後? 」

「えっ? 」


いま、この人、電話をしていて「あっ、いーね、食べたいな」って言っていたからと思ったんだけど⋯⋯ 。
電話の相手は妹さんだから、国際電話だった。


「トニーと食べてくる」

「どこですか? 」


と恐る恐る聞いたら、


「カリフォルニア」


と答えた。
そう言ってから、何か言いたげに弥勒は菜摘をしばらく見つめていた。

でも、結局言うのをやめたように、そのままサンフランシスコに出かけて行った。


✴︎


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