シークレットベイビー 弥勒と菜摘
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弥勒は1人じゃなかった。
女の人と一緒だった。



小児科の部屋で弥勒にすごくすごく会いたかった菜摘は、手も、足も、一瞬にしてかたく動かないみたいになった。

思考もとまって、涙も出なくて、息も苦しい。

どうして今まで考えもつかなかったのか、考えてみればその方が不思議だった。

弥勒に恋人がいるとか。
他の人と過ごしたかったとか。
愛してる人がいるとか。

弥勒と本当の家族になりたかった。
でも一子を挟んで、双方に2人とも本当に血が繋がってて、結婚してて、家族なのに。

でも菜摘と弥勒だけが、それぞれに離れていて家族じゃない。

菜摘は彼と恋人じゃない。


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『弥勒のマンションにとめてって言ったじゃない』

『だから、オレ結婚してるからムリだよ? 』

『広いから大丈夫よ』


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2人の話をぼんやり聞きながら、あー、別れることも出来ないよ、と思った。
私たち別れるほどの関係もない。

世の中の夫婦は、子供より先に2人の関係がまずあるから、子供がいても離婚したりするのかもしれない。

なのに⋯⋯ 。

私たちは一子とそれぞれ繋がっていて、それだけで成り立ってるから、だから別れる事ができないんだ。

女の人は、タクシーを呼ばれて、何だかんだ言いながら、それに乗せられて帰って行った。

菜摘は弥勒と帰る。

考えてみたら、弥勒と2人きりになったことがない。
でも、弥勒は、サンフランシスコ行ったり、不時着だったり、ずっと、あの女性と2人きりだったんだ⋯⋯ 。


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