シークレットベイビー 弥勒と菜摘
✴︎
「菜摘に言おうと思ってた」
その口調に、菜摘はグラスを握りしめて、緊張してきた。
弥勒は立ったままで、冷蔵庫の横の机に片手をついて、ちょっともたれて、右手はまだ髪を撫でつけている。
「一子がいてはじまっただろう? 」
と弥勒は静かに言った。
「子供は大事だよ」
それから、真剣な目で菜摘を見た。
「でも君は? 菜摘の幸せは?
子供が自立したとき、君に、その犠牲に、子供が逆に自分を責めないか? 」
菜摘も弥勒を見ていたけど、涙でぼやけてしまう。弥勒の顔が。
「自分の幸せもちゃんと優先しないと、逆に、あなたのために、って、いらない愛情の押し付けになって、君の人生を犠牲にしたという重荷を子供に背負わせてしまわないか?
一生苦しまないか? 」
「じゃあ⋯⋯ 私はどうしたらいいの? 」
「菜摘の幸せもちゃんと考えよう。
一子は一子だから、それは問題ないよ。
オレと菜摘にも問題ないよ。
そうじゃなくて菜摘自身が自由になって考えて。
一子のおまけだなんて言わないで。
なんでもしてあげるから」
「なんで、そんな事してくれるの? 」
「嫌なんだ、君が不幸せになるのが」
「自由に、一子の事から離れて自分を考えるって事? 」
弥勒は優しい。一子だけじゃなくて、菜摘の事も、こんなに真面目に考えてくれてる。
でも、
「でもそれじゃ、私が一子から自由になってしまったら、弥勒さんと一緒にいる理由がない⋯⋯ 」
と菜摘は俯いて言った。
優しく、紳士で、菜摘のことを考えてくれて、でも、全部いらなかった、そんな本当に菜摘のことを考えてくれてる優しさはいらない。
菜摘が欲しいのは。
「自由なんていらない」
「⋯⋯ じゃあ、どうしたいの?
オレが何かしてあげられるの? 」
菜摘は首を振った。
「違う、弥勒さんは何もできない、
だって⋯⋯ 私はただ、一子を理由にしてでも一緒にいたいだけだから、」
驚いた顔をした
「弥勒さんといたいだけだから。
だから、いま、全然不幸じゃない。
自由になんてなりたくない。
考えても選んでも⋯⋯ 」
言い出して、止まらない。
この関係が崩れて、一子も含めて戻れなくなるかもしれないけど、
「でも、あなたが言うように弥勒さんも自由だし、考え方も生き方も弥勒さんのもの。
あなたの気持ちを勝手に変えようとする事はできないけど、
でも私も、どうしたらいい?
あなたが、幸せになるために
何だってしたい。
何だってしてあげたいし、それしかない。
なのにしてあげられない。
別れてあげられない」
「もしかして⋯⋯ オレが好き? 」
「そうだって、そればかり⋯⋯ さっきから、言ってるじゃない⋯⋯ 」
声が小さくなる、言ってしまった。
取り返せないのに。
弥勒との関係だけを、こんな風に変えていってしまったら、一子は?
菜摘と弥勒は関係を変えるわけにいかないのに。
「菜摘に言おうと思ってた」
その口調に、菜摘はグラスを握りしめて、緊張してきた。
弥勒は立ったままで、冷蔵庫の横の机に片手をついて、ちょっともたれて、右手はまだ髪を撫でつけている。
「一子がいてはじまっただろう? 」
と弥勒は静かに言った。
「子供は大事だよ」
それから、真剣な目で菜摘を見た。
「でも君は? 菜摘の幸せは?
子供が自立したとき、君に、その犠牲に、子供が逆に自分を責めないか? 」
菜摘も弥勒を見ていたけど、涙でぼやけてしまう。弥勒の顔が。
「自分の幸せもちゃんと優先しないと、逆に、あなたのために、って、いらない愛情の押し付けになって、君の人生を犠牲にしたという重荷を子供に背負わせてしまわないか?
一生苦しまないか? 」
「じゃあ⋯⋯ 私はどうしたらいいの? 」
「菜摘の幸せもちゃんと考えよう。
一子は一子だから、それは問題ないよ。
オレと菜摘にも問題ないよ。
そうじゃなくて菜摘自身が自由になって考えて。
一子のおまけだなんて言わないで。
なんでもしてあげるから」
「なんで、そんな事してくれるの? 」
「嫌なんだ、君が不幸せになるのが」
「自由に、一子の事から離れて自分を考えるって事? 」
弥勒は優しい。一子だけじゃなくて、菜摘の事も、こんなに真面目に考えてくれてる。
でも、
「でもそれじゃ、私が一子から自由になってしまったら、弥勒さんと一緒にいる理由がない⋯⋯ 」
と菜摘は俯いて言った。
優しく、紳士で、菜摘のことを考えてくれて、でも、全部いらなかった、そんな本当に菜摘のことを考えてくれてる優しさはいらない。
菜摘が欲しいのは。
「自由なんていらない」
「⋯⋯ じゃあ、どうしたいの?
オレが何かしてあげられるの? 」
菜摘は首を振った。
「違う、弥勒さんは何もできない、
だって⋯⋯ 私はただ、一子を理由にしてでも一緒にいたいだけだから、」
驚いた顔をした
「弥勒さんといたいだけだから。
だから、いま、全然不幸じゃない。
自由になんてなりたくない。
考えても選んでも⋯⋯ 」
言い出して、止まらない。
この関係が崩れて、一子も含めて戻れなくなるかもしれないけど、
「でも、あなたが言うように弥勒さんも自由だし、考え方も生き方も弥勒さんのもの。
あなたの気持ちを勝手に変えようとする事はできないけど、
でも私も、どうしたらいい?
あなたが、幸せになるために
何だってしたい。
何だってしてあげたいし、それしかない。
なのにしてあげられない。
別れてあげられない」
「もしかして⋯⋯ オレが好き? 」
「そうだって、そればかり⋯⋯ さっきから、言ってるじゃない⋯⋯ 」
声が小さくなる、言ってしまった。
取り返せないのに。
弥勒との関係だけを、こんな風に変えていってしまったら、一子は?
菜摘と弥勒は関係を変えるわけにいかないのに。