シークレットベイビー 弥勒と菜摘
「不思議だね。
一子が残された時。
結婚するつもりもなかった自分が、全く迷いなく、ただ引き取ろうと思った。
あまりにも自然に家族だから家族になろうと思った。
いま、そんな気持ちだ。
菜摘のこと、しごく自然に家族と思っていたから。
ずっと一緒にいる妻だと思っているから。
2人の関係をわざわざ話すのが。
何でだろうね?
何でもしてくれるなら、どうにかしてくれる?
世界中どんなに人がいても、菜摘だから、君にしか出来ない、君しかいない⋯⋯ 」
「だって、私たち、こんな事がなかったら出会わないのに、一子がいなかったら、なんの関係もないのに⋯⋯ 」
「どうして?
ずっと一緒なのに? 」
「それは好きじゃないよ⋯⋯ 」
「いや、好きだけど? 」
「えっ? 」
だって。
「だから。弥勒の好きな人がいるんじゃないの? 」
「いるよ」
「だから! 申し訳ないよ」
「いや、だから言ってるんだけど⋯⋯ 」
「えつ? 」
「好きな人って菜摘だよ
だから、さっきからそう言ってる」
弥勒が机から離れて、菜摘の座る椅子の前に立って、菜摘を見下ろした。
「今まであった女性も、今から会うだろう女性の中でも、君が一番好きだよ」
「じゃ、今日の人は?
サンフランシスコでわざわざ会ったんじゃないの? 、わざわざ一緒に帰国したんじゃ⋯⋯ 」
「えっ! 」
と菜摘の言葉は遮られた。
「そんな風に思ったの?
ごめん。
気遣いがなかったね。
彼女は小学校の時の隣の家の子で、今でもマリアの友達だ。2回結婚して、今も夫がいるはずだ。サンフランシスコでも会ってない。緊急で一泊して、やっと飛行機に乗る時に偶然会って、たまたま一緒の便だったのがわかった。席も別だった」
と話してから、菜摘の顔を見て、弥勒は苦笑した。
「こんな風に言葉を並べて説明してると、まるで嘘ついて誤魔化してるみたいなかんじしない?
どうでもいい事なのに。
だから嫌なんだ。
でも、必要な時もあるんだね。
ちゃんと言わないと、誤解しちゃうよね。
ごめんね」
と、手を伸ばした。
「でも本当の気持ちはここにある」
と菜摘の手を取って、弥勒の胸に当てさせた。
「やろう?
だって、君しかいないんだよ、オレがするのは」
「えっ? 」
「だって、菜摘が好きで結婚してるのに、一生、君しか相手がいないから。
断られたら、ずっと菜摘を思いながら一人ですんのかな、それはちょっと⋯⋯ 」
何だか今までと違って、嬉しくて泣けてきて、こんな愛の告白どうしようって⋯⋯。
「ふふ、わかった⋯⋯ 言いたいこと⋯⋯ 」
と言ったら、弥勒が「? 」て菜摘を見た。
「私がいるのに勿体ない。
せっかく私がいるのに、一人でするなんて、勿体ない」
弥勒は「あれ? 」って言う顔をして、「ふふっ」と笑った。
菜摘も思わず笑った。
2人にしか分からない言い回しなのかもしれない、でも、それだけ理解してるし、分かり合ってた。
それなのに、なんの関係もなく過ごすなんて、本当に勿体ない。
お互い愛する気持ちがあるのに。
「だって、わたし、したことないから、どうなるかわかりませんよ。
期待はずれでも⋯⋯ もう、取り替えられませんよ」
「キスだけで、こんなに感じてるのに?
菜摘がほしくてたまらなかった」
あつい目で見られて、ゾクゾクした。
「いつもは一子がいるけど、今日は一子がいないから」