シークレットベイビー 弥勒と菜摘


「狭い家だな
何があったんだ? 」


と的外れな心配をする声の主は、菜摘の頭越しにワンルームの狭い部屋が見えているようだった。

菜摘は顔を上げた。

うわっっっ、何この人⋯⋯ 。

なんか今、オーラだか光だか背負ってるみたいに見えた。
なんか、すごいイケメンなんだけど⋯⋯ 。

普通の人じゃないよ、この人⋯⋯ 。

菜摘は驚いて、ボンヤリと彼の顔を見上げてしまった。

男性は、背が高く、近くで見た事ないような均整のとれた体型だ。
柔らかそうな黒髪で、かなり短いが、一体どうなってるんだか、今、美容院から帰ってきたみたいに超お洒落な、でもさりげない髪型だった。洗髪したてみたいに綺麗で、なのに自然に風に揺れていて、だのに整えられている。

それに目が。

見た事ないぐらい綺麗な目だ。

涼やかなキリッとした眉と目。
くっっっきり二重は、人間じゃないみたい。なんでこんなに綺麗な二重が存在してるんだろう、とそれこそ的外れな事を考えてしまった。

あっさりした鼻と唇が、驚くほど綺麗な目をさりげなくしっかりと纏めて、カンペキなイケメン顔⋯⋯ 。

顔もだけど、一般人じゃないんじゃないかな、こんなスーツ⋯⋯ 。
会社用とか、そんなんじゃない、着る機会なんて一生なさそうなお洒落のためのスーツ。
なんて言うか、テレビの人とか、モデルさんとか⋯⋯ ?

それに免税店みたいな匂いがしてるし。
こんな人、菜摘のボロアパートの風景と全くそぐわない。

美人さんの言ってた、兄の1人⋯⋯ かな、『レンラクあるから』って言ってたけど、彼女にちょっと雰囲気とか似てるような気もする⋯⋯ 。

男性は、菜摘のことを上から下までみて、


「大変そうだね」


とヤレヤレと言わんばかりに、ため息をついた。

いや、アナタにそんな事言われる筋合いないんだけど⋯⋯ 、


「まぁ、頑張って」


と何やら励まされた。
それから、こともなげに、


「あぁ、それか。
はい、貸して」


と両手を出した。


「? 」


菜摘がよくわからなくて、彼の差し出された大きな手を見ていたら、


「はい、連れて帰るね〜」


と一子に手を伸ばしてきた。


ちょっと!
まってよ、

犬や猫じゃあるまいし!


✴︎



菜摘が一子を離さないので、そのまま床に座って話し合いになった。




✴︎

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