世界でいちばん 不本意な「好き」


足の運びが駆け足になる。これは、ちょっとでもはやくバイトに入りたいからであって、うれしかったからじゃないもん。



「おはようございます」

「あーアリスちゃんおはよう、ごめんね急に頼んで」

「いえ、助かります」


店長が眉を下げて申し訳なさそうに言うから首を横に振る。少しでも空きが出たらシフトに入れてほしいと伝えているのはわたしのほうなんだ。


「あ、新人さんですか?」


茶色に染めたて、みたいな髪の男の子。


「そうそう。新田 千栄(にった ちえ)くんね」

「はじめまして、有栖川です」

「新田です!アリスさんよろしくお願いします!」


元気だなあ。たぶん年下。高校1年生とかかな。何もかも初々しい雰囲気が出ている。


「店長どこまで教えてますか?代わるので休憩入っちゃってください」

「えー本当に?ありがとう。レジ打ちしかできてないから細かい作業と、夜の便が来たら検品と陳列教えてあげて」

「わかりました」


レジはできるんだ。店長って先にそういうところを教えてくれるから良いんだよなあ。



うちの店舗は登下校と深夜がいそがしくなる。だからちょうど今の時間は教える時間もたっぷりとれる。


ゴミ出しや掃除のやりかたから、揚げ物やドリンクを作る手順まで教えて、たまにお客様対応。

新人のときはたばこの銘柄を覚えたりチケット発行の作業が苦手だったなと新田くんを見ながら思い出した。

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